『パッパパラダイス』は歌詞がまずもって素晴らしいが、サウンドも当然の如く面白い。まさか宇多田ヒカルがこんなスタイルで来るとはね! まだTVサイズの90秒のみだがもうこれだけで美味しい箇所満載である。
特筆すべきは、ボーカルではスキャット、楽器陣ではラッパ隊をそれぞれフィーチャーしている点だ。で、今回は前者のスキャットをちょびっとだけ取り上げる。
スキャットは意味のない音を声で出す事だが、とりわけ今回ヒカルが採用したのは『シュビドゥビ』『ドゥビドゥワ』と歌う、いわゆる「ドゥーワップ」と呼ばれるスタイルだ。あたしが前に「50年代のアメリカンポップス」って言ってたのはこれだね。
多分日本でいちばん有名な、ドゥーワップのスタイルを取り入れた歌手/グループはシャネルズ(のちのラッツ&スター)で、折しもリーダーの(「違う、そうじゃない」でお馴染みの)鈴木雅之が昨年、その名もズバリ「All Time Doo Wop !! (オール・タイム・ドゥーワップ!!)」という名のベストアルバムを出しているので好都合。しっかりサブスク配信されてるぞ。そこでは、かの有名な「ランナウェイ」や「め組の人」なんかでシュビドゥワ言ってるバックコーラスを聴くことが出来る。
しかし、今回の「パッパパラダイス」は更にもっとルーツを遡ったものを私は感じた。…と言ってここで洋楽のオリジナルのドゥーワップグループの曲を出してきても私含めて誰も知らないのばかりになるので、やはりここは日本の有名な曲を引いてみる。キングトーンズの「グッドナイトベイビー」だ。1968年のリリース。58年前っすか。
「グッナ〜イ グナァイベイビィ〜なみだこらえて〜♪」のあの曲ですね。もしかしたら50代以下の人はものまね歌合戦でのビジーフォーの歌唱で知ってたりするかもしれない。キングとは日本でドゥーワップのスタイルを取り入れた有名グループのひとつで、そんな彼らの最大のヒット曲がこれだ。で、ヒカルがここらへんまで遡ったんじゃないかと私が勘繰りたくなるのはさ、この「グッドナイトベイビー」って、Aメロのリズムがが3拍子(より細かく言えば8分の6拍子)で、サビのリズムが4拍子なんですよ、えぇ。こんな大衆に膾炙した曲でここまで大胆なリズムチェンジをするケースも珍しいんだけど。
で。『パッパパラダイス(TV Ver.)』は8ビートで駆け抜けて4拍子に落ち着いた後、最後の『ここはいつまでも晴れの予報〜♪』(なんて歌詞だろうなこれ!)のパートでリズムチェンジして3拍子(これまた8分の6拍子)になるんすよ。言わば「グッドナイトベイビー」とは逆のリズム構成になっているんだけど、もうこれはドゥーワップのスタイルを敢えて模してるとしか思えないのよ。絶対わざとやってますね、えぇ!
こういう、50年代60年代のサウンドを一体誰が導入したのか。年齢的には照實さんや三宅さんをまず疑いたくなるところだけど果たして真相や如何に!? フルコーラスが解禁になったらまたそこんとこを追究してみたいと思いますっ。